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2005年4月 1日 (金)

「社会調査へのアプローチ」 大谷・木下・後藤・小松・永野 

4月からの授業で使うのに、社会調査の教科書を大量に買い込んでいろいろ見てるんだけど、これは良いです。最初の一冊として、めちゃお勧め。
 
いまどきは大学の授業するのでも、まずネットでシラバスを検索すれば、いろいろな先生がそれぞれのやり方で授業をやっているのがわかるので、大変参考になる。
僕も「社会調査」というタイトルで授業をするのはこれがはじめてなので、参考にしようとシラバスを検索してみたが、「へー、そんなんで学生ちゃんとついてくるんかい」というようなものが大半を占めた。というわけで、シラバスから真似るのをあきらめて、教科書をいろいろ見てみたのだが、この本は、僕が社会調査に関してこれはぜったいわかっておいて欲しい、というようなことが、とてもわかりやすい例で説明してくれている。特に良いのが三章と四章。
三章は、社会調査とはどんなもので、どう役に立つかが述べられている。
 
例えば、調査のテーマ。これを著者の木下は「問題」と呼ぶのだが、その「問題と仮説」についての節を、最後にこんなふうにまとめている。
 
「�@ 問題は、問題というくらいだから疑問文の形にしなければならない。
例:「若者はマナーがなっとらん!」は単なる意見。
  「若者はマナーがなっとらん、かな?」が問題。
 �A 問題を整理するとは、変数と変数の関連の形に記述し直すことである。
例:「若者はマナーがなっとらん、かな?」という問題を、
    ↓    ↓    
  「年齢」 「マナーのよしあし」 という変数に。そして
  「年齢によって、マナーのよしあしは異なる。かな?」 へ
・・・・後略
 
といった具合。
 
四章は、調査票の作り方。調査票の質問文の作り方のノウハウ、NGなどをきちんとわかりやすくまとめている。項目自体は、どの社会調査の教科書にも載っているようなものなのだが、例が豊富でわかりやすく、説得力がある。
他の章も、とにかく情報満載でかつポイントを押さえてある。たくさんの情報と重要な点のわかりやすい説明は、(同じ頁数という限定だと)本来二律背反のはずなのだが、それを上手にバランスとっている。
 
たとえば「社会調査のノウハウを学びたい」っていうのが、この手の本や授業への基本的なニーズだと思うが、アカデミックにそれを捉えると、いちおう<社会調査史>とかも押さえておかなきゃ、みたいなところがある。実際上記のように、シラバスを調べるとそれだけで一コマ90分平気でとってる大学が結構ある。でも「調査の歴史を知ったら、よい調査ができるようになるのか」っていうと、あんまり関係ない気もするし、そうなると学生からすればきっと退屈なんじゃないかなってどうしても思ってしまう。
 
それがこの教科書だと、「社会調査のルーツ」として、「キリストはなぜ馬小屋で生まれたのか」というネタについて述べるきり。
オチは、「皇帝が人口調査を命じたため、それに応じるよう、キリストの両親はふだん住んでいる街から、本籍のあるベツレヘムに旅している途中だったから」というもの。とても印象的な例だし、人口調査が古代からなされてきた社会調査の定番だったのも事実だし、上手だなということがすごくよくわかる。それも含めて歴史の話はたった4頁にぎゅっと圧縮されている。
 
というわけですごく良い本なのだ。
 
僕の授業では、でもやっぱり「まずはいきなり実践」というやり方でいくつもりなので、これは参考図書くらいの扱いにはなるかもしれないけど、2500円ぜひ投資してください。

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