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2005年5月 9日 (月)

Shall We Dance? (ハリウッド版)

テレビでオリジナルをやっていた後に見たので、どこをどう料理したのかというのが鮮明に見られた。オリジナル版の笑いの基底が、「日本人が、欧米人みたいにダンスをする」ということの距離感にあるので、そうした構造を取り払った後で、表面的に類似するエピソードをどのように位置づけているかが、リメイク版の最大の見所になるはずだった。しかしピーター・チェルソムは、その点で大きな冒険をしていない。同じエピソードががらっと意味を変えるというようなシーンはひとつも見られなかった。その代わり、日本とアメリカの文化の共通点を引っ張り出して、その共通点を基底にして、同じような意味を引き出せる部分を利用する、という作り方をしている。
 オリジナルで渡辺えり子が演じたキャラのハリウッド版は、彼女の笑いを研究しつくしており、そっくりさんを見るのと同じような面白さがある。竹中直人の笑いの換骨奪胎ぶりもなかなかに楽しい。竹中の演じた会社の内と外のギャップを、「ユダヤ的orドイツ的生真面目さ VS. ラテン的情熱」の対照に上手に置き換えているのは見事。
 ただし同じエピソードに同じような意味づけができそうなものをわざわざ変えている部分には納得のいかない部分もいくつかあった。その一番の点はジェニファー・ロペスの役づくり。第一に、彼女がはじめひたすら主人公に冷たくふるまうということは、後の展開のために絶対必要な線だったはず。また場末のダンススタジオで仕事をしている自分に対する納得のいかなさも、リチャード・ギア演じる主人公のダンスへの情熱から力をもらう、という後の展開のためにやはりなくてはならなかった。もしかしたら監督は、ジェニファーに、「表面的な普通さの下の葛藤」を表現させるという二重の演技を期待していたのかもしれないが、僕にはそれは見てとることができなかった。
 またハリウッド版<渡辺えり子>についても、シングルマザーでダンス道楽のために全人生をかけているという人物像は、アメリカでもそれなりに説得力があるだろうに、彼女のサブストーリーは、メインとなるストーリーの陰で無視されている感があった。
 そういう意味では、周防監督の<脇役の一人一人までの物語を同時に語りつつ、全体を構成していく>というポリフォニックなストーリー展開の妙をあらためて感じさせられた。

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コメント

tbありがとうございました。先日テレビでオリジナルを再見。ストーリーはアタマに入っているけれど、映像を忘れてるワケです。リメイクのほうが面白かったため、自分の中で原型が消滅しちゃったみたいです。それでもオリジナルには「小市民喜劇」のよさがありました。だけど、映画的貧富の差は否めず、これからの日本映画が目指すべきを、僭越ながら考えた次第です。これからもよろしくお願いします。

お返事ありがとうございます。
僕もそのテレビ見てました。僕にとっては、リメイクは、オリジナルがあまりに素晴らしいから、そのバリエーションとして楽しめるというような位置づけなんですけれど、リメイクにはリメイクの良さがありましたよね。
先日うちの母がコンサートしたんですが、その中でダンサーの人たちが一曲だけMDをバックに踊っていました。かっこいい曲だなあと思っていたら、それがジェニファー・ロペスが「一時間だけ頂戴!」というときに使っていた曲だったことを後から知りました。

アメリカ版はそれなりによかったと思います。文化的に適度にmodifyしてあったし。リメイクするときは忠実にするのか、冒険するのか、どの程度冒険するか、で、評価にも差が出るのでしょう。


今回のリメイクは、ハリウッド映画に慣れたアメリカ人向けとしては上手に作られていたと思います。あまりいじりすぎず、周防監督に対しての敬意というものも感じられる手のつけ方だったのでは・・・と思います。

日米では“よい映画”に対する価値観が違うので、日本のよさを理解してもらえる作品としては周防監督の作品は本当に優れたものですよね。

関係ないけど、硬派なタイトルですね・・

確かにハリウッドのリメイクは、そもそもオリジナルを見ないことを前提に作られているわけだから、こんなものかなって思います。チェルソム監督、ヒアマイソングから大好きなので相当期待したんだけれど、オーディエンスのニーズに合わせればこれで合格点でしょうね。

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