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2005年9月 5日 (月)

社会における仮説検証という考え方の実際的な利用方法--今回の選挙を例に

前期の社会学概論という授業の感想で、「バランスがとても大事だ、というメッセージを受け取りました」というようなものがあった。
たとえばプレゼンの主題を選ぶ際に、「社会的に重要な問題を選ぶと、データなどは集めやすいが、オリジナリティを出しにくい。しかしマイナーな問題を扱うと、オリジナリティは出しやすいが、問題の重要性を訴えるのが難しい」などという二律背反が存在する。
僕は、オーディエンスにプレゼンを評価してもらう際、こうした二律背反が存在することがわかりやすいように、評価項目を意図的に、このような二律背反のペアを隣り合わせにして並べるようにしていた。

この二律背反でのバランス、というのが、下記に書いた<戦略的思考>に他ならない。

その学生が正確に認識していたように、その授業で目論んだことの一つではあったのだが、無論それは副次的なテーマである。
もっとも中心的な課題は、仮説検証的な方法論を身体で学ぶことにあった。

せっかくなのでこの選挙を題材にして、仮説検証的な考え方がいかに有効であるか、ということを説明したいと思う。

まず重要なのが、仮説は対立仮説をセットにして、複数の組で考える必要がある、ということである。
そしてもう一つ重要なのは、対立仮説は、論理的に分類することで、可能性の全体を網羅するようつとめる、ということである。
その際できれば、AとBという仮説があれば、Aを反証すれば、必ずBであるということが言える、というように対立仮説の組を作っておくと、検証結果の解釈がしやすい。

ではこれを、
�@ 小泉自民党が郵政民営化をあえて推し進めているのはなぜなのか。

という例で考えてみるとしよう。

まず大きな分類として、
 表向きの 「小さな政府」の政治理念による という理由が

A 真正である
B 偽者である
にわける。

Aの場合
1 郵政法案はそれ自体、その改革に結びつき、財政赤字の縮小など、直接日本の将来のためにもなる

参考資料 自民党
http://www.jimin.jp/jimin/saishin05/pdf/seisaku-010.pdf

2 郵政法案はそれ自体、「小さな政府」という方向での改革には結びつくが、財政赤字の縮小など、直接日本国民の将来のためになるわけではなく、それで得をするのはもっぱら外資系の企業などである(<アメリカによる圧力説)

参考資料
第38回 海外メディアが伝えた小泉・郵政解散劇の評判 - nikkeibp.jp - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/
世に倦む日日
http://critic.exblog.jp/3385933
野良狸の巣: マスコミ界のタブー?「年次・改革要望書」
http://rcdog21.seesaa.net/article/6329832.html

3 郵政法案はそれ自体、「小さな政府」という方向での改革には結びつかず、単に象徴的な存在であるが、それを前面に押し出すことで、自民党内から「小さな政府」という理念に対する反対勢力を一掃することで、将来的な達成をしやすくする
 

Bの場合

1 象徴的な内容での踏み絵を通して、単純に権力を維持したい (法案そのものの機能はA2と同じだが、動機が異なる)

2 郵政法案は反対勢力への妥協の結果、小さな政府の政治理念とは実質無関係になってしまったが、それでも個人的に、何かを達成したという証が欲しい(首相の個人的なこだわり説)

3 郵政法案は、他の主要な問題から国民の目をそらすためのまやかしであり、実質的には意味のない法案に国民の注意をひきつけ、それを政策の対立軸に設定することで、それ以外の重要な問題に関してフリーハンドを手に入れようとしている (朝日新聞などによる批判)

というようなことが考えられる。同様に、
 
�A 民主党が郵政民営化法案に反対したのはなぜなのか。

1 「小さな政府」の政治理念に基づいて、有効な方策とは考えられないから (表向きの理由)
民主党
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/soumu/BOX_SOM0020.html

2 自民党の法案に賛成してしまえば、党の存在意義が示しにくいから (反対のための反対)

3 (労組の支援を受けているため)郵政公社の職員の雇用を守る必要があるから (自民党の解釈)

 

最後に、ここでは仮説の検証のためには、そのデータを提供しているいくつかのホームページを挙げるにとどめたが、仮説はたんに「仮に立ててみる、説明」にすぎないことを忘れてはいけない。
正しい判断のためには、その仮説をデータによって検証する必要があるということだ。

仮説検証、というかたちをとることによって、自分の判断の根拠を客観的に他人に示すことができるし、また自分自身でも、「何となく考えた結果」ではなく、きちんと物事を考えることができるようになる。
もちろんこうした考え方は、選挙に関してだけでなく、あらゆることにあてはめることができる。

こうした考え方を、理系の人だけでなく、文系の人もしっかり訓練しておいて欲しい。

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