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2006年3月 1日 (水)

東京からの帰り

 その江戸東京博物館からの帰り、宇都宮駅から妻と一緒にバスで自宅に帰ってきたんですが、そのバスのなかでの出来事。時間は夜9時ごろです。

 バスには二人の子連れの若い奥さんが乗っていました。子供は4歳と6歳くらいの感じの兄妹です。バスの中はとても静かなのでお母さんとこどもたちの話がよく聞こえます。

 バスが駅を出たくらいの時には、女の子(マリカちゃん・仮名)はユウジくん(仮名)がどんなに大好きで、お嫁さんになりたい、という話をしていました。おにいちゃんは「今日は楽しかったね」とか話してます。話の文脈から推測するに、どうも親戚か友達と一緒に遊びに行った帰りのようで、そのユウジくんとマリカちゃんは少なくとも数歳は年が離れていてるようです。

 はじめはしゃいでいたマリカちゃんも、バスが出て十分くらいすると眠くなってきたようで、指をちょっとしゃぶりながら目を閉じてしまいました。
 でもお母さんはマリカちゃんに寝られてしまっては大変。お父さんがいないし荷物もあるので、バス停からマリカちゃんをだっこしてうちまで歩くのはちょっと無理みたいなのです。 だからといってバス停からタクシーを呼ぶこともできません。
 こういうことをお母さんは極めて論理的に説明して、マリカちゃんを説得しようとします。
 マリカちゃんは目は閉じていますが、いちおう聞いてはいるようです。ときどき反論もします。
 「だって疲れてて暗いところにいたら、眠くなるのが当たり前でしょ」

 そういうわけで、おかあさんはどれだけ言ってもマリカちゃんが目を開けないので最後の手段に出ました。
 「マリカちゃん、ユウジくんのお嫁さんになりたいんだよねぇ。マリカちゃんがユウジくんにふさわしいおねえさんになれたら、ユウジくんのお嫁さんになれるチャンスがあるかもしれないよ」というのです。

 ここまでおかあさんの説得はすでに10分くらいかかっていたのですが、僕はこどもを説得しようとしたって泣かれるのが関の山だろうと思っていました。あきらめてタクシー会社に電話してきてもらうしかないんじゃない、とか思っていたのです。
 しかし、この新たな展開に僕とあやちゃんは「おおっ」という感じでさらに聞き入ってしまいした。

 マリカちゃんは答えます。「おねえさんっておかしいよ。マリカはマリカだよ」。
たしかに。兄妹という関係からすれば、マリカちゃんは妹であっておねえさんではないですよね、なるほど。

 お母さんは少しもひるまずこう答えます。
 「マリカちゃんだって、だんだん大人になっておねえさんらしくなるでしょ。
今はまだこどもだけど、はやく大きくなっておねえさんになれば、ユウジくんのお嫁さんにしてもらえるかもしれないよ。でもね、ただ大きくなるのを待ってたら、マリカちゃんがおねえさんになる間にユウジくんだって大人になるでしょ。
そしたらいつまでたっても追いつけないよ。それでもいいの?」

 マリカちゃんは無言ですが、たぶんよい感じだとお母さんは見たのでしょう。お母さんは調子に乗ってさらに続けます。
 「でもね、マリカちゃんががんばっておねえさんらしくなろうとしたら、ユウジくんも振り向いてくれるかもしれないよ。
だからがんばろうよ」

 でもマリカちゃんは、彼女が大人になる間にユウジくんはもっと大人になっているということが気になるらしくかえって無反応になってしまいました。
 お母さんはフォローをいれます。
 「だいじょうぶだよ。おねえさんになるために今できることをやればいいんだから。バス停からちゃんと歩いて帰るというくらいなら、マリカちゃんだってできるでしょ? それで十分おねえさんだよ」

 振り向かないとマリカちゃんの様子が見えないので彼女の反応はわかりませんでしたが、 たぶんうなづいたか何かしたのでしょう。
 「バス停からちゃんと歩いて帰れれば、おねえさんになれるからね。そうしたらユウジくん、お嫁さんにしたいなあって思ってくれるかもよ」

 説得は功を奏しました。振り向いてみるとマリカちゃんは無言ですが目を開けています。

 それからしばらくして、マリカちゃんは言いました。
 「なんだか眠くなくなっちゃったよ」
 それに対してお母さんはすかさずこう答えます。
 「だいじょうぶ。うちに帰っておふとんに入ってあったかくなったらぜったい眠れるから。いつもそうでしょう?」

 このくらいで僕らはバスを降りてしまったのでその後どうなったかわかりませんが、マリカちゃんはちゃんと歩いて帰れたのでしょう。でも僕らがバスを降りる直前に見ると、今度はおにいちゃんが目を閉じていました。
 おかあさんがどうおにいちゃんを説得したのかはわかりません。

 僕も妻もこういうお母さんははじめて見ました。子育ての風景もずいぶん変わったんだなあと実感した夜でした。

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