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2006年9月 4日 (月)

Eトッド 『世界像革命』

  後半に収められた歴史人口学者、速水融との対談(「家族構造から見る新しい『日本』像」 三浦信孝訳 pp.145-176)、言語学者サガールとの共著論文は知的な興奮を誘う。
速水融がここに提示している明治期日本における、地域別の平均世帯人員数、世帯内平均夫婦組数、平均初婚年齢の地図は大変興味深い。これらを作成したデータをもとに速水氏は、日本を形成した三つの文化圏という仮説を立てている。
一つは関東以北。ここは早婚でかつ子供の数が少ない。速水氏はこれが縄文文化からの先住民だと考えている。次にフォッサマグナから以西の中央日本。ここは晩婚でかつ子供の数が多い。速水氏は彼らが朝鮮半島や中国からやってきた渡来人の文化を引いていると考える。最後に南西海岸部。ここは結婚は遅いが、婚外子が多いという文化の海洋民族の文化が定着した、と考えている(pp. 164-165)。
ローラン・サガールとの共著論文(「新人類学序説−共同体家族システムの起源」pp. 177-209 石崎晴己、東松秀雄訳)では、ロシア、東ヨーロッパ、中央アジア、北インド、中国というように、アジア中心部に広大に拡がる父系共同体家族の文化と、その周辺部に位置し様々な家族形態を持つ諸文化の分布から、多様な家族形態のうち、父系共同体家族がアジアの中心部で勃興しそれが周縁に広がっていった、という壮大な仮説を立てている。トッドはこの父系共同体家族における権威主義と平等主義の混交から、共産主義思想との親近性をもともと論じていたわけだが、そのような家族形態と文化との関係性を考えれば、こうした家族形態の世界的な配置は重要な問題になってくる。

 もっとも中国やロシアなどはそれぞれ広大な地域を占める民族であり、それが持っている家族形態がどの程度一貫しているのかは、どのような調査により結論が下されたのか詳しく知らないと、俄かには信じがたい。トッドが、それを共産主義分布と結び付けようとしたという研究動機からしても、批判的な調査が必要だろう。

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