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2006年9月 4日 (月)

小熊英二 『単一民族の起源』

  僕が知る中で、知識社会学の最高の研究事例の一つだと思う。
これだけたくさんの情報を「日本人単一民族説<>混合民族説」という枠でまとめ、それが明治以降どのように変転していったかを、日本の社会情勢と人類学それ自身の方法論の進展といった二つの視角から語りきった手腕は実に見事。
 本の前半は、戦前の大日本帝国が日清・日露戦争以降拡張を続けるに合わせて、単一民族論が下火になり、複合民族論へと主流が移っていく様を描いている。後半はそうした拡大路線において、帝国に吸収された民族間の現実的な葛藤とナチスの影響などから単一民族主義が傍流として息を吹き返し、戦後に続いていく姿を描いている。植民地を失い、複合民族説を主張すべきイデオロギー的基盤を失って、戦後は、それまでの複合民族論などなかったかのように単一民族論が幅をきかすようになっていく。それも戦争中における単一民族論の優生学=ナチス的な「科学的証明」はすっかり忘れ去られて。

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